愛が、たぎる
2021年カンヌ国際映画祭 オープニング作品 監督賞受賞
愛が、たぎる
アダム・ドライバー
マリオン・コティヤール
アネット

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Introduction

愛に呑み込まれる、ダークファンタジー・ミュージカル  
唯一無二の監督カラックスのとてつもない傑作!

   レオス・カラックスは唯一無二の監督である。彼の映画は誰の作品にも似ていない。まるで流れに逆行するかのように一作ごとに作風や文体を変えるので、自分自身の映画にすら似ていない。その物語はいつもどこか神話のようでもあり、説明可能なことと不能なことが混ざり合い、謎に答えはない。そのときどきに作者が抱えていた思考や感覚が不思議な夢のような形で物語られるのだ。

 

 カラックスは23才の時、長編第1作『ボーイ・ミーツ・ガール』(84)をカンヌの批評家週間に出品。自身の分身といえるアレックスの閉ざされたロマンティシズムを夜の闇に描いてヤング大賞を受賞し、「恐るべき子供」「神童」と騒がれた。そのカラックスもすでに60才。今回は偶像破壊的なバンド・スパークス(ロン&ラッセルのメイル兄弟)のオリジナルストーリーをもとに、ほぼ全編の台詞が(ベッドシーンまで!)歌われるロックオペラ・ミュージカルとして、独創的なダークファンタジーを創り出した。英語圏でも「本年の最もオリジナルな映画」「興奮させる傑作」「壮大な実験」と軒並み評価が高い。

 同じことを繰り返さず、後にも先にも似た作家のいない唯一無二の監督カラックスは、作品数こそ少ないが、早くから現代映画の重要な作家と目されてきた。アレックス3部作として新感覚のフィルムノワール『汚れた血』(86)、究極の愛と孤独を見つめた『ポンヌフの恋人』(91)を完成後、文豪メルヴィルの原作を現代に翻案した壮絶な『ポーラX(99)、銀行家らしき男が別人に変身を重ねる予測不能な『ホーリー・モーターズ』(2012)と一作ごとに未踏の領域へ挑戦してきた。『アネット』はその集大成であり、カラックスならではの新たな「夜の讃歌」にして「夜の果てへの旅」となった。

撮影現場でライブで歌われたミュージカル
デモーニッシュな運命に翻弄される神話的カップル

 ロック界で50年のキャリアを持つ兄弟バンド・スパークス(ロン&ラッセル・メイル)。『ホーリー・モーターズ』での楽曲使用が縁でカラックスと知り合い、ミュージカルの案をいくつか送り、『アネット』が選ばれて長期間のコラボを経て映画化が実現した。カラックスは10代からスパークスのファンだったといい、アルバム『ヒポポタマス』(2017)ではボーカル&アコーデオンで“When You’re a French Director”にも参加した。

 

 スパークスは、台詞がすべて歌われるジャック・ドゥミのミュージカルへのオマージュも込めたと語るが、『ホーリー・モーターズ』でカイリー・ミノーグが歌ったシーンと同じく本作でも(ミュージカル映画で一般的なプリレコーディング方式ではなく)撮影現場でライブで歌われたので、役者たちには困難な作業となった。

映画は非凡なオープニングシーンから始まる

   スパークス(白シャツにネクタイ姿がロン)がスタジオで演奏準備をしていて、コンソール側のカラックスがタバコ片手に開始を指示する。その脇には本作が捧げられた娘ナスチャの姿。演奏が始まるとすぐにスパークスと監督親子は夜の街に歌いながら出て行き、主演のアダム・ドライバーとマリオン・コティヤールにサイモン・ヘルバーグも合流し、彼らが衣装を着ると物語の世界が始まる。

 

 悲劇的な死のオペラを歌うソプラノ歌手アン(M・コティヤール)と挑発的な人気スタンダップ・コメディアン、ヘンリー(A・ドライバー)。美女と野獣のようなセレブ・カップルはメディアや群衆の注目と称賛の的になるが、理想的メロドラマとみえた関係は、スパークスの不吉でアイロニカルな楽曲に導かれ、不気味でピカレスクな世界に入り込んでいく。ヘンリーは深い闇に吸い込まれ、デモーニッシュな運命に翻弄されていく――

歌うアネット、アン、そしてヘンリー

 アネット役は当初から人形の予定で、日本の人形作家を含めさまざまな試作が行われたが、現場で操作可能という条件で仏のエステル・シャルリエが様々な年齢のアネットの顔を、ロミュアルド・コリネが胴体とテクニカル面すべてを担当。アネットは「父と娘、野蛮さと幼少期をつなぐリンク」というサルのぬいぐるみを抱いている。なお、ベビーアネットのステージの歌声はLYC(ロンドン・ユース・クワイア)所属の少女ヒーブ・グリフィスが担当した。

 

 スタンダップコメディであがき続け、嫉妬や猜疑で理性を失っていくヘンリーという難しいキャラクターを演じたアダム・ドライバーは、今回初めてプロデューサーを兼ねた。「レオスの映画だから、スパークスが作曲したミュージカルだから」という。出世作『スター・ウォーズ』シリーズのカイロ・レン役からアート系まで幅広くこなすが、今回の悪い父親は激しい感情や演技に歌唱と従来にない挑戦となった。

 オペラの歌姫アンを演じたマリオン・コティヤールは、アカデミー主演女優賞の代表作『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』やフェリーニ『8½』をミュージカル化した『NINE』があるものの、今回は撮影現場で歌うということで準備期間のボーカルレッスンが大変だった。

強烈なヴィジュアル、スタッフの連携による限りない創意工夫

 カラックスは元来デジタルを嫌いグリーンバック合成なども好まず、本物の森や本物の海を望んだが、実際的条件から重要シーンの多くが(昔の撮影所のように)スタジオ内で創意工夫して作り出された特殊なセットで撮影された。アンが歌うオペラの舞台が森(ギュスターヴ・ドレにインスパイアされた)につながる幻想的なシーンやジンバル“(カメラスタビライザー)を使った嵐の海の船上シーン、亡霊のアンのヘア・衣装・撮影法などだ。

それではどうぞ息すらも止めてご覧ください!!

Story

ロサンゼルス。攻撃的なユーモアセンスをもったスタンダップ・コメディアンのヘンリーと、国際的に有名なオペラ歌手のアン。美女と野人とはやされる程にかけ離れた二人が恋に落ち、やがて世間から注目されるようになる。だが二人の間にミステリアスで非凡な才能をもったアネットが生まれたことで、彼らの人生は狂い始める。